FXはほとんどの人が負けて散っていく、と言われますが、
人間の本能的な部分、
相場の本質的な部分から
勝てない理由を掘り下げるシリーズです。
「これからFXを始めてみたい」という人は事前知識として、「なかなか勝てない」「勝てはするけどトントンから抜け出せない」という人は、それぞれの解説を読んでもらって、自身のトレードと照らし合わせじっくり考えてみてください。勝ち続けられるようになるなんらかのヒントを見い出せるはずです。
原始時代からのプロスペクト理論
ぼくら人間どうしても、目の前の利益を先に確保し、損は先延ばしにしてしまいます。
これを心理学用語で”プロスペクト理論”といいますが、これは人間の本能というべきものです。
原始時代、狩猟に出てうまいこと獲物を捕らえることができたはよいものの、そのまま何日も保存しておくことはできません。危険を冒して狩りに出かけ、やっとの思いでゲットした獲物が腐ってしまってはその苦労も水泡に帰してしまいます。
狩ってきたものは即食べる。狩ってきたら喰う!そう、この本能がぼくらのDNAにしっかり刻み込まれているのです。
しかし、いわゆる”トレードの教科書”には逆のことが書いてあります。
「損失はすぐに損切し、利益はとことん伸ばしましょう。」と。
これは論理的に正しい。トレードの本質からみても正しい。
みんなこれができないから負ける。ならその逆をやれば勝てる。
そうなんです。損はすぐに切って利益を伸ばす、これをやり続けられればトレードでは勝てるのです。
いや、ちょ待てよ!?
1勝9敗でも勝てる?
理屈の上では、1勝9敗でも勝てます。
1回目:30pips負け
2回目:20pips負け
3回目:20pips負け
4回目:20pips負け
5回目:10pips負け
6回目:10pips負け
7回目:20pips負け
8回目:10pips負け
9回目:20pips負け
10回目:170pips勝ち(トータル10pipsの利益)
でもこれ、絶対ムリなんです。いや、仮にこの10回のトレードはできたとしても、次の10トレード、20トレード、30トレード…できませんって。それこそムリゲーです。
ぼくの経験上5~6回連続で負けると、次のトレードではせいぜいトントンまでもっていくのが精いっぱいです。そしてヘトヘトに疲れます。その日はもうトレードする気にはなれません。
なぜ「損はすぐに切り、利益はとことん伸ばす」ができないのか?
理論上は誰でもわかるトレードで勝つ方法「損はすぐに切って利益を伸ばす」が、ぼくらはなぜできないのでしょうか?
その理由は前述のとおり、それが人間の本能だから。
もうひとつあります。
損失はコントロールできるが
利益はコントロールできないから
損に関しては、▲10pipsになったから、▲10000円になってしまったから、などの理由で”自発的に”かつ”確実に”損切することができます。
しかし、利益に関しては、「9連敗▲160pipsだったから、次は+170pips獲ったるー!」といきごんだところで、自分がエントリーしたところから170pipsも伸びるかどうかはわかりません。伸びるかもしれないし、伸びないかもしれない。相場はぼくらの都合では動いてくれません。相場が動きたいほうに動くのです。
もちろんいろんなテクニカルや相場感から、”到達点”のメボシは付けるのですが、そこに到達するかは不確実です。不確実なものを確実視するのはキケンです。
じゃ、どうすりゃいいの?
おいおい、じゃあどうすりゃいいのよ?やっぱFXって、トレードってムリゲーじゃん。
そんな声が聴こえますが、
ぼく(筆者しょーちゃん)が行き着いた、実践している、自分なりの正解を書きます。
それは
「損はすぐに切って利益をとことん伸ばすトレード」をあきらめた
です。
すんません。。
トレードの王道、トレード勝利の方程式をあきらめました。ぼくには無理でした。やっぱ本能に抗うことはぼくにはできなかったです。意思が貧弱、心がチキンなもので…。
じゃあ、どういうスタイルでやっているかというと、
高勝率を重視し、利益はそこそこに、損失は損切ポイントギリギリまで耐える
ひとことで言うと、こんな感じです。
勝率を重視(勝ちを重視)し、利益はそこそこに。
勝率を重視といっても、勝率90%だとしても、最後の1敗で全部の利益を吹っ飛ばしていては意味がありません。さっきの1勝9敗とは逆ですね。「勝率重視」といっても別に勝率にこだわっているわけではないんです。
勝ちと負けのいい塩梅をとると、ぼく的には6~7割くらいの勝率が「心地よい」のです。9敗もできません。心が折れます。5~6連敗が限度です。
もちろん6~7割の勝率だと、どうしても利幅は犠牲になります。でもそれでよいのです。
例えば、東京時間の平均ボラティリティー(9時~15時の間で動く高値安値の平均値幅)が50pipsだとしたら、そのうちの10~20pipsをいただく感じです。
↑これだったらなんだか取れそうな気がするでしょ?
逆にいうと、1日の平均ボラティリティーが100pipsしかないのに、自己都合で170pips取ろうなんてのは理論的に無理なハナシなのです。いかに「FXは1勝9敗でも勝てる」というのが理想論すぎて、現実的にはマヤカシでしかないのがわかると思います。
損切ポイントで最後のナンピン。(計画的ナンピン)
「ナンピンだけは絶対ヤメロ!」
「下手なナンピン、スカンピン」
「ナンピンは地獄への入り口」…
などなど、いかにナンピンというものが危険であるかは耳タコな人も多いと思います。
でも、本当にそうなのか?
まあ、間違ってはいません。ナンピンは使い方を間違えると資金ショート、退場へまっしぐらです。多くの人(特に初心者)は、ただ単純に自分の最初のポジションがアゲインストした(マイナスに持っていかれてしまった)ために、エントリーの平均値を下げる手段として闇雲にナンピンをしてしまいます。そして「戻れ戻れ」とお祈りトレードになってしまう…。
言うなれば”無計画ナンピン”ですね。
しかし、これが「計画的なナンピン」であればどうでしょうか。
つまり、あらかじめ分割エントリーしていくのです。
ぼくはたいていの場合、3分割でエントリーを組み立てます。
1発目:打診の一撃
2発目:本チャンの一撃
3発目:最後(会心/悪あがき)の一撃
1発目:打診の一撃
本来エントリーしたいところよりも分が悪いが、そのまま相場が伸びて行ってしまうこともあるため、その機会損失を回避するために、打診的(試し)にエントリーしておく。
2発目:本チャンの一撃
本来エントリーしたかった価格帯まで相場が来てくれたので”本番の一撃”を追加します。当然このとき1発目はマイナスになっているわけです。これを巷ではナンピンと呼ぶのでしょう。ですが、ぼくとしては”追撃”の一手に近いのです。
3発目:最後(会心/悪あがき)の一撃
さらに相場がMyポジションよりもアゲインストしてきてしまいました。損切ポイントの一歩手前です。ぼくが損切ポイントとするのは、相場が反転するとみんなが考えるところの少し下です。ストップ狩りの場合もあるので、ピンポイントよりも少しだけ離します。
たしかに「これぞナンピン」とも言えますが、実はこの最後の一撃のリスクリワードはとてもよいのです。
なぜなら、損切はすぐ下に置いているので、損切幅はとても少ないわけです。一方、ここから狙える利益は、(目線がまちがっていなければ)少なくとも2発目までは戻るはずで、通常は1発目の価格帯まで戻る、それどころか、1発目が利益になるところまで伸びる前提で最初のエントリーを行っているはずなので、とても割のよいエントリーポイントなのです。
損切になる場合は、そもそもの目線がまちがっていた、相場感がまちがっていたので、潔く損切るだけになります。
この最後の一撃を打つか打たないかでトータルの収支や成績がガラっと変わってくる、まさに”会心の一撃”となりえるのです。ま、見方によっちゃ悪あがきの一撃とも言えるわけですが(笑)。
相場の道理というか、あるあるというか、みんなが安心感を持ってエントリーできるようなところは大抵の場合負けになります。一方、危なっかしくて(すぐ損になりそうで)入れないようなところにこそチャンスは転がっているわけです。
まとめます
この項でぼくが言いたいこととして間違えてほしくないのは
FXで勝ち続けられない理由のひとつに「人間というのは本能的に利益先取り・損失は後回し」にしてしまうというのがある。だから、損失はすぐに切り、いかに利益を伸ばせるかに注力せよ、ということではありません。それができればよいのですが、本能なのでなかなか克服するのはムズカシイと思うのです。
そうではなく、
自分の性格やライフスタイルを考慮して、「利益先取り・損失は後回し」といかに折り合いをつけるか、ということです。
ぼくはそこに対して「あきらめる」という折り合いをつけ、上記のようなトレードスタイルに行きついたのです。
トレード道とは、いかに自分に適したスタイルを見出すかという道程なのです。